「ネットワークこそがコンピュータである」――。1980年代当初、誰もがコンピュータの可能性を搭載チップの演算処理能力にしか見出せなかった時代、ネットワークの潜在力をこんな言葉で予言した若者たちがいた。はたして、彼らは1995年、このビジョンを見事に体現してみせた。発表と同時に世界を席巻したJavaによって…。 『High Noon: The Inside Story of Scott McNealy and the Rise of Sun Microsystems(邦題:サン・マイクロシステムズ―世界的ハイテク企業の痛快マネジメント)』は1982年にスタンフォードとバークレーの4人の若者によって創業されたエンジニア向けのワークステーション・メーカー、「サン・マイクロシステムズ」が、後にプログラミング言語Javaを擁し、ネットワークコンピューティング分野で株式時価総額400億ドルを超える世界的企業へと成長していく過程を克明に描写したものである。そのサクセスストーリーは、決してスマートなものではない。むしろ、アメリカのビジネス文化における「異端」の伝説であるといってよい。 たとえば、ライバル社製のワークステーション導入を決定した企業のロビーに、サンの面々が乗り込み、入札を再検討させてしまう。慣行や形式から外れた、「どんな犠牲を払ってでも勝つという西海岸流」である。Java、ソラリス、SPARCといった革新的技術を生むもとになったのも、既存のシステムに埋没しない、優れた知性だった。そして、特筆すべきは、サンの面々が一様に、古い秩序の破壊と創造への情熱を持っていたことである。サンがたどる「ワークステーション→コンピュータ→インターネット・ベンダー」という歩みからは、オープンシステムの段階から分散知能の世界、さらにインターネットへと情報技術が大きく展開する激動の歴史が浮き彫りになる。そこで演じられるマイクロソフト、インテル、IBM、AT&Tといった巨頭たちとの熾烈な「協争」の様相は、インターネットビジネスや文化、テクノロジーの今を知る意味で欠かせないテキストになるだろう。(棚上 勉)