1877年の初演時には失敗に終わった『白鳥の湖』だが、1895年の再演以降は、もっとも人気の高いバレエとしての地位を確立している。ベルリン国立歌劇場による本作で指揮を務めたダニエル・バレンボイム(同劇場の芸術監督にして音楽総監督)の言葉を借りるなら、「チャイコフスキーの『白鳥の湖』は時代を超越した傑作だ!」ということだ。今回の振付は、1895年の再演時のものをもとにしているが、パトリス・バールのアレンジによってモダンな味わいが加わった。優美な衣装および舞台美術と相まって、非常に伝統的で魅惑的な、大人のためのエンターテインメントに仕上がっている。バレンボイムは、チャイコフスキーのスコアのロマン派的な美しさを強調。磨きぬかれたアンサンブル・ダンスが展開する中、オリヴァー・マッツがジークフリード王子を情熱的に演じ、シュテフィ・シェルツァーが美しいおとぎ話のヒロインになり切っている。 このDVDの画質は、スクイーズ収録のため全体的にきわめて良好で、まったくといっていいほどザラつきが見られない。ミドル・ショットおよびロング・ショットがソフト・フォーカス気味だが、これは恐らくビデオ撮影時の問題であり、DVD変換にミスがあったわけではないと思われる。ドルビー・デジタル5.1chによる音響効果は画面と一体化し、とりわけリア・チャンネルをうまく使ってライヴ感をかもし出す。「臨場感」という言葉の意味を思い知らされるはずだ。DVD特典と呼べるメニューは物語の概要だけ。しかし、付属のブックレットがなかなか立派で、物語の概要はもちろん、チャイコフスキーとバレエ音楽についての論評、演奏解説、演奏者紹介と充実した内容になっている。(Gary S. Dalkin, Amazon.co.uk)